ルポ 生活保護  本田 良一

On 2011年1月14日, in 書評, 雑感, by admin

ルポ 生活保護―貧困をなくす新たな取り組み (中公新書)

 生活保護を含めた社会保障制度は国を左右する問題である。また今後問題の大きさは更に増すと思われる。こうした問題に対する情報や知見を高める目的で本書を手にとった。高齢者に対する社会保障は、過去にかけた年金の受給であり生活保護は大きく違う。本書では事故や母子家庭により生活が困難となったケースを取り上げている。後に再起するケースも併せて紹介されている。こうしたケースに異論があろうはずはない。

1/10日経『核心・平田論説委員』は【30年後に日本人を守ろう】という題のもと次のように述べている。『日本の前途は厳しい。それなのに政治家は数ヶ月先の地方選挙をにらみ人気取りの政策に走る。それは20年先、30年先の人々の暮らしを犠牲にすることである。…….日本は米欧と同じく劣勢に立つ側として先進国病の克服が課題。そして子や孫の世代を思い新興国との共存共栄に向け戦略を直す必要がある。』こう述べた上で① 新興国と同じ土俵で戦わない、② 強い分野が存分に力を出せるような経済の非効率な部分を改めること ③ 財政問題の正常化の目処をつけること、と提言している。同日の『経済教室・マネックス証券社長 松本氏』は『国は潰れないと思われている存在であり、リスクに対する感覚が甘い』としている。

現在の状況は松本氏が述べるように極めてリスキーな状況である。しかし国は、将来を見据えた政ができない状況である。平田氏の提言は“自分に厳しいこと”が求められる。その社会は、高い知的能力、知識創造が普通に求められる社会なのだ。新興国と戦わないということは雇用吸収力もないだろう。当然のことながら公共事業は減少し工場の海外シフトは進む。1992年~2009年にかけ国内工場は532万人の雇用を減らしている(1/4 日経)。この数値は北海道の人口と粗一致する。反対にこの10年で168万人が日本企業の海外工場で採用されている。これは鹿児島県の人口に近い。我々は産業構造の変化を正面から受け止めた発想がもとめられる。

産業構造の転換は規制の外枠で行われる。雇用は法の枠組がある。JALの解雇者は提訴をした。この判決を経営者は注目する必要がある。会社更生法が適応され、税が注ぎ込まれてもそれでも解雇ができない。こうした状況では変化に対応できないからである。昨今もPIGSのデモをTVなどでご覧になった方も多いと思う。ギリシャなど国は破綻し、IMFからの融資でなんとか息をついた。財政赤字の削減は融資条件である。一丸となってこの苦境を乗り切るしか方法はない。やるべき事は『デモ』でなく『労働』や『考える』ことである。この要因が『まつりごとの不在』であることは明らかである。

こうしたことを踏まえると本書でとりあげるべきは「受給者となった要因を過去から検証して欲しい。そのうえで受給者とならないためにはどう考え、行動すべきかの提案が望ましい」と私は思う。

負の連鎖は更に増すだろう。しかし自らの力で断ち切ることも可能なはずだ。
“社会が如何に気付かせるか”“どう行動することで希望を持って生きられるか”を厳しい環境ではあるが教示することが必要なのではないかと思う。受給者となる要素を中学や高校の時に持っているように感じる。そうでなくても20代にはその芽生えがあるのではないか。そのときに如何に芽を摘むかが大切なのではないだろうか。

 

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