「読み」の整理学 (ちくま文庫)

『一日一冊読書』を始めてから2年を経過した。そのうえでこうしたブログに併せて発信を行っている。2年間に手にした本は800冊を超える。他にビジネス・時事問題に関する雑誌、山渓、自転車関係を含めるとゆうに1000冊を超える。これに新聞が加わり山行や自転車以外の休日は一日中読み続けることとなる。それでも読み切れていない本が山積みではあるのだが。


読む背景にはすきなことがあるのだが、知を習得し自らの価値を上げることが目的である。本書は『自分の知らないこと、未経験の内容文章は難しい、それに比べ知っていることが書かれている文章は簡単に読める…未知を読むベータ読み…頭脳を刺激し、読書世界を広げるベータ読みを身につける方法とは?』との目的が裏表紙に記されている。

自分の知らない世界を読むのは実に難しい。しかしそれを理解し自らの力としたとき得られる喜びは大きいのだ。著者はイギリス B・バーンスタイン(社会言語学者)のRC(限定用法:親しい間柄などで用いられる省略の多いことば)とEC(論理的で文法的にも整備されたフォーマルな言葉)について説明をしている。その上でイギリスの社会現象について次のように論じている。

『なぜ中流の子女がすぐれた学業成績をあげるのかと言えば、学校の授業、先生の説明のことばは主としてECによっている。過程でより多くのECに触れている子女の方が有利になるのは当然だというのである。
 このことは階級の問題と結びつけて考えるべきではなく、むしろ教育の品質に対して光を投げかけるものとして受けとめたほうが良いように思われる』

読む込むことは知識の習得だけなく知能の向上に帰結するのだ。情報でなく『考え方や思考の方法』を得られるような方の話を拝聴すると『形容詞』が少ない。そうでない会話は形容詞が多いように感じる。主観中心の対話はそうなりやすいのだろう。どちらにしても未知との出合とはなりそうもない。著者ののべるECはこうしたことも類似性があるように感じる。

本書はいわゆる『勝間式ノウハウ本』ではない。よって論理的に読解することが困難な本や論文の解読方法は載っていない。しいて言えば『…その場でわからぬことは、あれこれ時間をかけて考える。時間が加勢する。一度でわからぬ文章を何度も何度も読み返す。…やがて通じ合うところまで近づくようになるのかもしれない』

単純に解釈すれば教養や知を身につけるには近道などないのである。仮に雑誌などでエッセンスに近づけたとしても情報に過ぎないと思う。周辺知や奥深さがなければ本質や精髄とは成り得ないのである。
本書はこうしたことも気づかせてくれる貴重な一冊なのである

 

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