日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える (光文社新書)

題名に“嘘はない”というところか。財政問題全般について著者の視点で解説をしてくれる一冊である。日経を読むための良き教科書とも言える。

著者の公共投資に対する考え方は『公共投資も企業の投資と同じで、基本的には投下したお金より便益が大きければ、その事業は行う意味がある』というもっともな考え方である。これができてないように見えるのは穿った見方をする癒しさであろうか。そうではなくアカウンタビリティの不足と言えるのではないか。どちらにしとコスト・ベネフィットを軸に公共投資が行われているようには思えない。

本書は21項目の問題について解説がなされている。取り扱い問題数が多いのでボリューが少ない点は否めないがとれも理解をしやすい。たとえば『デフレが円高を招く』と題して次にように述べている。

為替レートは『…金利などさまざまな要因が加わってきますが、たとえばドルと延-つまりアメリカと日本の購買力の比率からかけ離れた状態が長く続くことは無いのです。これをわかりやすく示す例が「マック指数」です。これは、自由な取引が行われている世界では一物一価、つまり同じ商品やサービスはどこでも同じ値段だということが前提になっています。ハンバーガーチェーンのマクドナルドが世界中で販売するビッグマックが日本では100円、アメリカでは1ドルだとすれば、1ドルは100円に相当すると考えることができます。しかし1年経って、日本の物価上昇率はゼロ、アメリカが2%の上昇だったとします。するとアメリカのビックマックは1.02ドルになりますが、日本では100円のままです。ということは、1.02ドルが100円になったのですから1ドルは98円ということになり2円の円高になったわけです』

これは良く言われる考え方だがやはり著者の説明は“上手い”と思う。こうした解説ができる人を心から素晴らしいと感じる。

また本書では元財務官僚としての情報も溢れている。郵政民営化に伴った【かんぽの宿売却】において当時【鳩山邦夫総務大臣】がオリックスの宮内義彦会長落札を批判したことは記憶に新しい。最初に収益還元法による内部計算を行ったのは著者とのことである。収益還元法でなく投資金額を軸に価格をだせば売却などできるはずもない。公共事業であった“かんぽの宿”がコスト・ベネフィットの視点で建築などされていないのだから当然のことである。未だ“安値売却”を問題にしているが星のリゾートや旭山動物園の例でもあきらかなように【ソフト・人材】が問題なのである。

この問題を起点に西川会長(元三井住友銀行会長 現相談役)が辞任されているが、ここまで大きな問題を解決できる人材が今後でるのだろうか。

さまざまなことを副題の通りシンプル・ロジカルにまとめられている一冊である。

 

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