不平等国家 中国  園田茂人

On 2010年11月22日, in 書評, by admin

不平等国家 中国―自己否定した社会主義のゆくえ (中公新書)

“日本は平等である”と心から言えるであろうか。“平等”の概念を議論するには私はあまりにも浅学非才である。調査も困難を極める。テーマや年代などを意識して設定し、設問方法によっても結果は大きく変化する。こうした概念的調査や論評は非常に難しい。
 しかし本書は難関を乗り越えるべく、膨大な定量調査の結果をもとに論じられている。また平等の概念については、レイヤーや項目を細かく切ることでその目的を達している。おそらく論文として論じられたものを読みやすい新書に書きなおしているのだろう。

第一義に中国は一党独裁制の共産主義、マルクス基本概念の基に成り立っている。その国家においてこうしたテーマを論じることに違和感を覚えるかたもおられるかと思う。しかし実際は下記図のような社会階層が形成されているのである。

著者はこうした階級について次のように述べている。『マルクスの基本概念に「階級」があることは言うまでもありませんが、「階級」のメルクマールは、生産手段の所有/非所有にあります』現実的には“所有”の概念ではない階層がすでに生まれている。こうした現実を踏まえ考察を重ねなければならない。

大きな枠組みで平等を捉えたとき“結果”と“チャンス”で考えることができる。しかしその前に国民が“競争社会を受け入れるか否か”を当必要がある。
【不平等で経済が発展するよりも、たとえ経済が停滞していても平等なほう良い】
     反対38% (アジア・バロメーター調査2006 グラフから推測) 

中国は40%近い人々が競争社会を受け入れているのである。本書から学歴、地域間格差、官僚腐敗など多様な問題を抱えているが“成長したい”という欲求を垣間見ることができる。モチベーションが高いことを感じることができる。

 次に結果についての調査を見てみる

【よく働いた者がそれだけ収入を得るのは当然だ】
      反対17% (アジア・バロメーター調査2006 グラフから推測)

こうした結果を概観すると中国は“競争社会”を受け入れ“結果の不平等”を受け止めている。他の調査結果などを見ると“政府への信頼”“メディアへの信頼”指数は明らかに低い。政府などでなく自らの足で立とうとしているのではなかとも捉えられる。

中国については今後も知識を深めたいと考えているが、どうやら日本人は競争を受入れない社会になろうとしているようだ。

【不平等で経済が発展するよりも、たとえ経済が停滞していても平等が良い 反対22%】  
【よく働いた者がそれだけ収入を得るのは当然だ                反対20%】

中国より低い数値なのである。競争とモチベーションなどを考えると国内から海外採用へ切り替える理由がわかならいでもない。不平等でも競争を受入れ、チャンスの平等を勝ち取ることが必要なのではないか。

 

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