尖閣戦争――米中はさみ撃ちにあった日本(祥伝社新書223)

過激な表題であるが本書が何を述べたいかをまず紹介したい。

『2010年9月の尖閣事件は、一過性の偶発的事件でなく、起こるべくして起こった。アメリカは事実上手を組み、領土問題には不干渉を決め込む。それを見透かした中国は満を持して野望の実現に乗り出した。味をしめた中国の挑発は、今後ますます激しさを増し、やがては軍事行動に映る可能性も十分にある』

 本書は中国が論外なのは当然のこととして『米国』についても強烈な問題意識を持っている。本書の他でも言われていることだが、それは“今回の『尖閣問題』で在日米軍の関連経費が相当増額するだろうということだ。まずWikiにて在日アメリカ軍防衛予算について確認をしたい。

【防衛省HP[2] によれば、平成二十二年度の在日米軍関連経費の内訳は、いわゆる「思いやり予算」は1881億円であるが、しかし、それとは別に、基地周辺対策費などが1737億円、 SACO関係費が169億円 提供普通財産上試算(土地の賃料)1656億円 米軍再編関係費が909億円、 基地交付金378億円、が存在する。ベトナム戦争後のアメリカ経済と財政が不振だった時代に創設された制度だが1990年代までは増加傾向にあった。しかし1999年の2,756億円を最後に下がり続け現在では2,000億円を切る水準となっている】

この予算がどの程度増額するかということだが、領土問題は実効支配したうえで議論を重ねなければならない。本書がいう中国の軍事行動の前に日本が尖閣周辺をより強固に守らなければならない。現状ではそのために在日米軍防衛予算の増額は当然のことだと考える。最も懸念されるのは首相が【決断】できるかということだろう。APECにて議論されていることを期待したい。
 
 本書は『尖閣の一件が中国による対日侵略の宣言であり、ある種の【宣戦布告】だという、本来われわれがしっかり見抜かなくてはならない』と述べている。これが正論かい否かまたどう考え行動を取るべきか、我々は考えなくてはならない。1990年湾岸戦争のとき海部総理はブッシュ大統領(父)に呼びつけられ一週間で米国を訪問している。しかし原油という大きな問題はあったにしても【当事者】とは言えない。しかし今回は【当事者】である。さらに当事者の【問題解決能力】に極めて疑問を感じざるをえない。

 しかし新聞などの発表からそうした緊張感を感じ取ることはできない。日経に限って言えば“情報流失問題”に置き換えられようとしている。流失は組織の問題である。当然のことながら“尖閣を媒介とし中国とどう向きあうか”まったく次元が違う問題なのだ。

 過激ではあるが、問題と正面から向き合うためには必読の一冊である。

 

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