中国激流―13億のゆくえ (岩波新書 新赤版 (959))

本書は2005年初版であり内容は2000年~2003年が中心である。北京オリンピック(2008)以前のことではあるが、著者はNHK特集『激流中国』の資料提供者であり地域に密着した深い調査がなされている。今の中国を見てもあまり変化があるように思えない。

本書は俯瞰考察された中国レポートである。おそらく数多くの研究者が参考にしていることだろうと思う。現実の中国を見据えながら興味深く読みことができた。日本として尖閣は重要な問題である。しかし中国経済の混乱は日本を含めた世界経済にとり大きな問題である。その中国で当時話題となっていたのは『ラテンアメリカのリスク』とのことである。その意味を著者は『純粋な市場経済のモデルによれば、一定のレベルまで発展すると臨界点に達する。その臨界点を克服すれば、欧米のように全体的に豊かになれる。だが失敗すれば、ラテンアメリカにように貧富の格差が拡大し不安定になる』とのことである。

オリンピック、万博といった世界的イベントを終えたが、2極化はより進んでいる。そもそも中国の発表を信頼すること事態が難いしいのだから実際の状況は現地レポートなどを信頼したほうが良いだろう。例えば現在も不動産投資が加熱しバブル化し危険だと言われている。しかし8000万戸のマンションが売れ残っていると言われている。この問題は2002年当時すでに100万戸の売れ残りがあり、2500億元の資金が未回収となっているとのことである。

 資本主義ではこうした投資は考えられない。それでも発生するのは『官営資本企業』が要因である。官営資本の代表者は『役人』であり『開発面積の拡大』が出世に影響する。資金は国営銀行でまかなう。用地は『国営地上会社』で補う(住民の移転補償これはひどいものらしい)。販売の問題さえなければいくらでもマンション建設は可能なようだ。果たしてこうした積み上げのGDPなどの数値は正確なのか(実際日本においても0.2%程度の数値は傾向に過ぎないとのことである)。
[世] [画像] - 中国の実質経済成長率の推移(1980~2010年)

これは経済成長の数値であるが、私はその信頼性はい如何なものかと思うのである。1990年から約20年極めて高い成長を示しているイノベーションやブランドが創出されていないのだ。政治体制の問題かないかは不明だが事実として受け止める必要がある。

しかし今後成長する可能性がここに示した論文数だ。

論文の数は国力とも深く関係する。現在の数値は危ういと思っているが、今後注意深く見守らなければならない。
我々はこれからも中国と関係を持ちながら国づくりがなされることは明らかである。に中国という国家を勉強する良書である。本来新書一冊でおさまるような内容ではない。中国を考察するときの最高の資料集ではないか。

 

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