知的創造のヒント 外山 滋比古

On 2010年10月20日, in 書評, by admin

知的創造のヒント (ちくま学芸文庫)

知的創造のヒント 外山 滋比古

帯には『個性的なアイデアを生み出す思考習慣』とある。思考習慣というと常にポジティブでいようとか思い付いたらメモを素早くメモを取るなどということが思い付く。そもそもポジティブになどというのは自らがネガティブになりやすいことを認識しているということになるのか。考えを深めると難しそうである。またメモの大切さは著者も多く語っている。

創造性はビジネスに限らず、社会生活全般に取って重要であることに異論は少ないだろう。しかしイノベーションを可能にするような創造性を有する人材は少ない。そこで大きな枠からは飛び出せないが、興味を引かれる、利便性を向上させる、またはアクセスを増やすなどの創造性を保つことは誰にでも可能なことではないか。私はこうしたことを可能にするにが【編集力】と考えていた。市場化されている形式知を集め自らの文脈に落とし新たなモノ・新しいコトへ結びつけるという考え方である。編集=孵化機能=集合知である。著者はこうした私の【創造】の捉え方を否定し、【酒造り】のメタファーで論じている。

『アイデアはいわば化学の分子に相当する。ものは分子からなっているが、単独の分子ではない。個々の着想や思考が有機的に結び合って、人を酔わす力を持ったとき独創となる。酒が生まれるのである。カクテルのうように酒を材料にして酒を作るのは加工であって創造ではない。酒でないものに反応をおこさせてアルコールを醸成したときはじめて酒を造ったということができる。創造とはこの意味の醸造でなくてはならない』

真なる【創造】は著者が論じる通りなのである。またカクテルばかり造っていたら、酒を創ることはできないだろう。執念が創造性を生むことすらあるだろう。しかしビジネスではここが難しい判断となる。正解などない。サントリーやエーザイの研究室の話を聞いたが成功はしているものの経営的には【期限】を切られているのである。リソースが十分ではないマイクロファームの文脈に落とすと、基礎研究を含む開発的創造は困難であろう。しかし【酒を創る】という考えを持つことで創造を可能とするのかも知れない。ここには運もあるだろう。しかし結局“執念”や“こだわり”だったりするのではないだろうか。

そのためには創造性を磨く環境が必要である。付きを与えてくれる、感じさてくれる人間関係が重要だと思う。不毛な会話は磨きをかけるどころか錆が着くかも知れない。異業種で自らが有していない知や感性を持っている人と対話を楽しむことがKFSではないかと思う。そのためには自らも切磋琢磨し、相手に求められる人物となる必要がある。自らを進化させ知を蓄積することが良い関係性を構築するのだろう。いわゆる準備ともいえる。

創造性と問題意識、問題意識の欠如とルーチンワーク。この4つを比較すると昨今の就職問題に結びつかないか。就職が困難な人物はどのような者か、履歴や経歴はどうか。ここを改善することが大切なのではないだろうか。企業は成長するためには【人】が必要なのである。【人】がイノベーションを可能にするのである。 

 

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