戦後世界経済史   猪木武徳著

On 2010年10月15日, in 書評, 雑感, by admin

戦後世界経済史   猪木武徳著

 新書(中公新書)ではあるが、400ページのボリュームがある。昨今対外との問題を考察するために読んだ。新聞など日頃の情報を整理するうえで大変参考になる一冊だと思う。

著者は本書の目的を次のように語っている。内容的『本書の目的は、第2次世界大戦後から20世紀末までの世界経済の動きと変化を、データと経済学の論理を用いながら鳥瞰することにある….詳細な地図を用いて問題を解決しなければならないことはある。しかしそれと同時に、極めておおまかな地図を念頭においてから、問題とする場所の詳しい地図を見ることも必要であろう。そう考えて、思いきって「粗い地図」を書いて見ることにした』

 本書は私が知らないだけで、リベラルアーツに近い知識なのかも知れない。しかし本書副題にあるように『自由と平等の視点から』とした著者の考えの端緒を知ることができるのである。著者は資本主義の精神の問題にも踏み込み次のように述べている。『モラルそのものを説くのではなく、人間の欲望を肯定しつつ、それをいかにコントロールし良い方向へ向かわしめるか、その制度や社会的仕組みをどう作り上げればいいのかという視点から問題を把握すべきだ、との認識に立っている』

果たして『良い方向』とはなんなのか。浅学な私には知る由もない。また本書からも解を得ることはできなかった。しかしこの20年間の歩みが正しかったとは思えないのである。補正予算とは『予備費でも対応できないような状態に行う追加予算や追加以外の修整』(知恵蔵)が補正予算である。予見し難い20年であったろうか。そんなことがあろうはずはない。仔細を調べたわけではないが、この間の補正で、予定されているすべての新幹線、高速の建設が可能だったそうである。赤字国債が問われているが日本は他国と違い著しく軍事費が少ない。こうしたことを十分に踏まえ政治のありかたを見据える必要があると考える。果たして金利が3%も上昇したら国債の利払いは可能なのだろうか。スタグフレーションが無いとは言えないと思うのだが。勢いに乗って書かせて頂けば2010年参議院選挙で1.7%や3.8%の政党投票率の政策を容易に受入れるのは如何なものであろうか。1.7%の政党は9人の候補者全員が落選しているのである。連立内閣における当事者能力とは如何なるものなのか。

本書書評から脱線をしたが、他国が経済成長を成し得るために如何なる障害を超えているかを本書から知ることができる。“政治への依頼心からの脱皮”と“国民に迎合しない政治”が必要なのではないか。ギリシャや今起きているフランスのストライキのような現象が国内でいつ起きても不思議ではない。民事再生法のJAL、財政再建団体となった夕張のようなケースがいつ発生しても不思議ではない。そうなる以前に俯瞰して考察を重ね自らが何をすべきかを常に考えなければならない時代だと思うのである。

本書を通じて数多くのことを知ることができた。心から著者に感謝したい。

 

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