戦後政治の崩壊  山口二郎

On 2010年10月4日, in 書評, 雑感, by admin

戦後政治の崩壊  山口二郎

ブログ再開にあたりこの書籍を取上げた理由は次の理由による。この1~2年政治にあきらめを感じていた。しかし次に取り上げる、外交、防衛、予算について自らの考え方を持つことは、大人としての義務であると考えた。
最近の世相を騒がしているのは次の3点である。まずプラザ合意から25年を経過したにも関わらず為替を短期的処置ですまそうとすること。次に20年に渡って補正予算を組んでいるにも関わらず内需が安定化しないこと。第3番目に尖閣諸島の問題である。こうしたことは、短期的視点でなく戦後政治全般を検証する必要がある。

本書筆者は2大政党制を望んだ学者(北海道大学教授)である。また2大政党は望むが民主党の応援団ではないとも公言している。私は2大政党制が良いかということについていささか疑問を持っている。その理由は、ざっくりとした数値を捉えればGDP500兆に対し国家予算が200兆(特別会計重複を除く)であることによる。政治と生活が深く関与しており、再分配率が高い政党に関心が向きやすいからである。これを2つの政党で争えば債務がスパイラル的に増加するように感じている。裏を返せば予算が政治家の身分保障、失業対策とはならないのかということである。結論を先取りすれば未成熟な連立政権では先に述べた問題は解決できないのではないかと考える。

自民党の参議院過半数割れは1989年に始まる。日経平均最高値を付けた年である。衆参単独で過半数が取れない事が、政治の不安定だとすればこの20年間ずっと不安定ということになる。筆者はこの時を『不透明な連立政権の始まり』としている。この関係を過半数が欲しい自民党と政権に関与したい公明党の関係とも述べている。こうした政治環境が20年続き、昨年度衆議院選挙にて民主党が過半数を取り大きな政党が2つできあがった。

日本はベンチマーキングのひとつにイギリス、アメリカがあげられる。筆者は「イギリスにおいては、労働党と保守党は労働者と資本家・地主という階級対立を反映してきた。アメリカにおいては、階級以外の人種、宗教といったアイデンティティの重要性が大きく政党が階級をもとにすっきりとまとまっているわけではない。労働組合、黒人などのマイノリティは民主党を支持し、宗教色の濃い白人や裕福層は共和党を支持するという形で指示基本の色分けは明確に存在する」
こうしたことを踏まえて日本の対立軸は何であろうか。明らかに対立していないと思われる。国内でも55年体制は対立軸が明らかであった。立法に対しては寡占化した自民党に対し、憲法を変えさせないため旧社会党は3分の1を死守した。果たして我々は何を軸に政治を選択、信託しているのか。予算配分と仕事や生活が深い関係性を示せば将来を見据えた政権選択は困難であろうと思われる。対立軸の無さは主張ができないというとも言える。まず選挙民が外交、防衛、予算について自らの考えを明らかにし、政党の考え方を引き出すことがスタートラインなのではないかと考える。

次回に本書忠実に書評を述べたいと思う。

 

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