大いなる不安定

リーマンショックを言い当てたとして著名な著者である。本書は2010年10月が邦訳初版となる。当然ことならが311以降の報道は原発や地震に多くの情報がさかれている。時計の針を戻して311以前の日本を概観しても景気は決して上向きでない。新聞の多くは中東問題や民主党の献金などを扱っていた。こうした不安定なときに発生した未曽有の天災だった。この3週間でさえリビアを始め世界は大きく変化している。また日経(3/19)によればこの危機を脱するのに日本は「米国債を売却するのか、デフレorインフレ、財政問題は」と世界から注目を集めている。その後の紙面を追っても日本が海外に有効なメッセージを発信しているようには見えない。復興に全力あげるのと同時に世界に対し感謝の言葉と同時にこれからのグランドデザインをメッセージを発信しなければならない。

本書は世界観の無からリーマンショックを一つの軸に世界観を書いている。構成か「歴史を振り返り、過去の危機とそれを分析した経済学者について論じる。次に今回の危機の根源を深く掘り下げ、十分に予測可能なパターンをたどって、過去いくつもの事例と同じように破局がことを見ていく。最後に、将来に目を向け、金融システムにひつような改革を示し、今後新たな危機が起こる可能性を論じていく」とある。

実際にこの紙幅本書を紹介するのは少し無理がある。ここではリーマンショックと日本との関係について少し考察をしてみたい。

当時FRB議長であったグリーンスパンを非難する声は多い。またこれまでの文献を紐解いてもそう判断せざるお得ない。バブル突然崩壊するわけでなく振り返ると破裂箇所は数カ所見ることができる。本書には鮮明にそれが述べられている。果たして膨らむ過程はどうなのか。日本はこの過程で問題を残している。

「グリーンスパン議長は….フェデラルファンド金利誘導目標を5.5%引き下げている。そしてこの低金利を長く維持しすぎており、この金融緩和を一因に、持続不可能な信用・住宅ブームが盛んになった。しかし事実はもっと複雑だ。FRBは2004年~2006年にかけて政策金利を引き上げたのだが、長期金利や固定金利モゲージ・ローン金利はほとんど動かなかった。金融引き締めには効果がなかったのである。海外から潤沢に資金が供給されていたためだ。それまで10年間に、中国や日本、ドイツが巨額の貯蓄を蓄積し、アメリカに貸しだして、財政赤字や、消費者から企業まで過剰な借入を賄っていたのである」

これは世界が“繋がっている”ことを言い当てたものだ。こうした問題に対してG7、G20と協議が続く。しかし当事者が多ければ多いほど一つにまとまることは少ない。船頭多くしてというやつである。ようするにプラザ合意のようなことは極めて難しいと言える。

日本は失われた20年と言われている。日本のバブル崩壊以降、1994年メキシコ1997年 韓国、対、インドネシア、マレーシア1998年 ロシア、ブラジル、エクアドル、2001年 トルコ、アルゼンチン、そしてリーマンショックと続く。その影響はアイルランド、ギリシャ、などEUに及ぶ。リーマンショックの当時デカップリングが叫ばれBRICSの成長が望まれた。その期待を裏切らなかった。しかしその反面国連は一つになれず北朝鮮への制裁を中国とロシアは反対する。新たなG、覇権国となることを夢見ているのかもしれない。

本書の琴線にも触れることができなかったが奥深い一冊であることは間違いない。

 

アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業 (ウォートン経営戦略シリーズ)

あまり聞きなれない言葉なので、Advocacy marketing について説明したほうが良いかと思う。

本書では「advocacyとは ,支援、擁護、代弁などの意味を持つ。顧客との長期的な信頼関係を築くため顧客を支援する。自社の利益追求や、短期的なメリットの提供はニの次にして、「顧客にとっての最善」を徹底的に追求する。顧客の利益や満足度を最大化するためなら一時的に自社の利益に反することでも行う。自社製品より優れた他社製品があるなら、素直に他社製品の購入を進める」とある。

最近マーケティング、経営戦略に関する本を連続して読んでいる。その理由は今後のマーケティングを軸とした方向性を再構築することが目的である。戦略論やマーケティング論は言葉遊びのように新たな軸ができては消える。
明らかなのは商品構成から販売戦略までITCを除外することはできない。特に集客ということにおいては必要不可欠であろう。SNSもwebマーケティングの一部となりつつある。SEMを成立させるにはコストとのバランスが難しくなりつつある。これは現実である。

そうした中で言葉遊びに振り回されず本質を掴んだ経営戦略を構築しなければならない。本書はその一端にあるのではと思っている。本書は管理会計の教授に以前進められた。また数多くの参考文献でも取上げられている。いつもながら大手企業のケースが紹介されている。しかし“アドボカシー”の上記解説を見ても理解頂けるように“規模”が問われるマーケティング戦略ではないのだ。ここに着目をしたい。

価格競争という体力勝負に中小が最終勝者となることは概ね困難である。また勝ったとしてもそこには何も無い。またこうしたコモディティ化した商品は効率性がすべてである。ここにも中小は弱点がある。勝者の条件はこうしたセグメントでは戦わないことである。アスクルと文具店の関係を見れば明らかだ。商品やサービスに多少なりともオリジナリティを付加させられることが求められるのである。

こうしたことを現場の文脈に落とすと、CRMを連想しそうな雰囲気がある。本書はで
CRMとの関係を明らかにしているので是非ご一読頂きたい。しかし中小の文脈ではこの概念を理解したうえでCRMを実行することが実践的ではないかと考えるのである。個対個の関係性というであるが、実際は個対多である。共通項を見出しマーケティングに落としこむのがCRMである。この関係の発展形本論を派生できないかと考えた。中小ではCRMによる信頼がアドボカシー構築に大いなる貢献を示すのではないだろうか。
そう感じたことからCRMの参考文献を5冊購入した。今後、研究ノートを作成する予定である。