経営戦略論 3

On 2010年11月16日, in 経営戦略, by admin

経営戦略 3

経営戦略をするには(1) 経営理念 (2)ドメインの決定  (3) コア・コンピタンスの選択と育成 (4) リーダーシップが求められる。

経営理念

経営戦略を構築するにあたって経営理念やビジョンを明確にすることが大切であること前回述べた。

理念、ビジョンの役割を再確認すると次のようになる。

① 企業の構成員の意欲をかきたてる夢として機能させること
② 企業構成員の行動規範を創ること
③ 事業における成功の鍵を明らかにする

要するに【人を動かす】ために明確にしなければならないのである。
明らかにした【理念・ビジョン】は組織に浸透させなければならない。また環境の変化に伴い再定義の必要性もある。

ドメインの決定

ドメインを決定する際には、顧客軸、技術軸、機能軸で定義することが必要である。顧客軸とは市場軸を指す。また技術軸とは製品軸である。
自社の商品が○○でるから∴(ゆえに)に△マーケットで事業展開を行うのはドメイン設定としては役不足である。無論これらの軸も重要ではあるが、ドメインの設定には『顧客に対しどのような機能を有しているか』の機能軸が重要である。これは差別化などにも大いに影響がある。

コア・コンピタンスの選択と育成

コア・コンピタンスの概念 
 顧客に対し他社には真似のできない自社ならではの価値を提供する企業の中核的な力 
G ・ハメル C・Kプラハット

コア・コンピタンスを軸にした戦略論はRBV(Rsource-Based View)となる。企業内部に培った能力を競争のために資源であるとする考え方である。企業内部の経営資源と生産設備、不動産等の有形資産、ブランドネームや特許などの無形資産、顧客対応等の組織ケイパピリティ(能力)を指す。
リーダーシップ

リーダーの役割は大きく次の3点と言える。

① 自社の経営資源、能力、戦略的地位、組織の体制などを展開して企業を成功に導くような夢のあるビジョンを提示する。
② 現実に立脚し、実現可能であることを検証し、明示する。
③ 方向性が組織の中で受け入れられ実現されるように働きかける

ここで求められるのは管理型ではない。従来見えていなかった進路を明らかにして指し示すリーダーである。優れた経営者であっても、得意領域がある。要はこれらの役割をマネジメントチーム全体としていくことである。つまり理論を学ぶことの意味は、自分の見逃しがちな領域、苦手な領域を知り、それが得な人を見つけ、必要に応じて任せていくことにある。

【マイクロビジネスの視点から】

本書には『単一事業はシナリを組み実行するのみなので容易である』と冒頭に述べられている。決してそのようなことはない。そうであれば3年で50%の企業が倒産に至ることはない。現実はリソースが少なく、 経営理念 ドメインの決定 コア・コンピタンスの選択と育成 リーダーシップと言った事柄をMBの文脈に落とすことが困難なのが現実である。これらが成功のシナリオであると仮定した場合、成功要素を積み上げてから起業すべきであるとの結論に結びつく。コンサルタントによっては経営が厳しくなる主たる要因は準備不足にあると述べる方もいる。

『….容易である』には反論はあるが、これは一考する必要があると思う。特にRBVの概念である<他社に真似できない価値>があれば必要とされるのである。ラーメン店などは年間25%が廃業し35%が新たに出店される。しかし確実に残る店舗はあるのだ。生き残りの最も重要な点は『商品』である。ここでのRBVは『味』ということになる。その上で適正な粗利が得られるということになる。

この準備ができず起業した場合が極めて危険なのだ。例えば<仕入れが安い>などまったく強みにならない。PPMが移動すればその段階で価値はて低減するのである。リサーチを丹念に行い自社(経営者)の価値を高めることが重要なのだ。これは事業開始後も強みを発展させ続けなければならない。強みこそRBVではないか。

 

国家の命運 薮中三十二

On 2010年11月15日, in 書評, 雑感, by admin

国家の命運 (新潮新書)

国家の命運 薮中三十二

 外務省事務次官であった筆者が退官後良くメディアに登場するので御存知の方も多いと思う。普天間、尖閣、北方領土と外交問題が多様な外交問題に内閣がさらされていた時期もあまりないように思う。レベルの低いことではあるが、政治や外交に関心が集まり、政治を監視することは良いことである。こうしたことが持続的になれば良い。

さて本書であるが退官まもない著者が外交の実態を綴った興味深い一冊である。職務との関係で述べられないことが多いのであろう。しかし重責を果たした人の外交への心を綴りは価値が高いと思う。その著者が今の官僚・外務省について次のように述べている。

『官僚機構は政策の継続性を重視する。….それまでの政策を自ら否定してでも、新たな改革に取り組むというのはとても無理だ。時代が大きな変革をもとめているときに、官僚機構の習性が改革を遅らせ、半ば機能不全に陥ってしまったというのが実情である』

官僚文化の実態がそのものであり変化することは“無理”だと述べている。官僚自らが脱皮し新たなパラダイムを創り上げることは困難ということである。バブル崩壊後の細川政権成立時に“政治は官僚が動かしているから問題無い”と述べる評論家が多数いた。おそらく的を射た答えなのだろう。しかしその官僚機構がフリーズしているとしたら政治は一歩も前へ進むはずはない。しかし自覚症状があるということは改善の可能性が秘められているともいえる。

今ビジネスモデルはボーダレスにグローバル化しつつある。グローバル化した社会は外交との関係性が高く外務省の責は極めて重い。携帯電話は覇権どころかガラパコスという言葉さえ生まれた。ほんの少し機能を加えて新製品として販売する。輸出で難しいのは当然であろう。北米トヨタがリーマンショク以前好調であったが、購入者を分析すると“中古車での売価が高い”ということが主たる理由である。
ドライヴィングという【コト】の魅力でなくモノにすぎないのだろう。システムは【コト】を創造することにつながる。iチューン、ipodしかりである。著者はシステムを世界に売り込むことが日本経済生き延びるすべであると述べている。この一端が地デジシステム南米への売込成功だと記している。

FTA TPPしかり外務省は今後もこの重責を果たさなければならない。縦割り行政である以上関係省庁との垣根を越え、任務を果たすことが21世紀の日本の運命を左右する。“開国”などと言葉遊びの政治家の障害を超え職務を成し遂げて欲しい。我々は【コト】を創造するクリエティブクラスとなるために、何を成すべきなのか。何を研鑽することが求められるのであろうか。おそらく生涯追求する課題ではあると思う。追い求める続けることが研鑽の一端ではあろう。

今回中国大使に伊藤忠の丹羽氏が最後の御奉公と述べて赴任した。尖閣の問題を始めどれだけ重責に苦しまれているのかと思う。著者も米国大使や国連へいずれ赴任するのだろう。こうした大使の責務は極めて重い。苦しく思い責務ではあるが、国家の代表その責を果たして欲しいと思うとともに、心から応援したい。

外交について考える機会を頂いた一冊である。

 

ゴールドマン・サックス研究

On 2010年11月12日, in 書評, by admin

ゴールドマン・サックス研究<世界経済崩壊の真相> 神谷 秀樹

ゴールドマン・サックス研究 (文春新書)

 昨日深夜一気読みの一冊。ゴールドマン・サックスが以前は、如何に素晴らしい企業であったかという話も面白いのだが、著者の経済見通しと危機の捉え方が実に面白い。常日頃私が頂いていることを述べているのである。

このグラフは日本のGDPと債務の変化を表したものである。20年間に渡って国や地方が出してとなり、経済の自律的回復を試みたが効果は上がっていない。しかし最後の出しての存在がなければGDPの更なる下落があったことも事実だろう。しかしこうしたファイナンスは自立を促す手法として限界であることも事実なのだ。著者はこうした現状について次のよう述べている。

『日本経済史をひもとくまでもなく【政府が借金をして大盤振る舞いをしても、経済は伸びず、借金だけ増えた】ということは全く議論の余地がないほど明らかではないか。それでもこうした方策を主張するのはたいがいは不勉強であるか【選挙のため】だけである』

私は『議員自信の失業対策』だと思っている。著者は<ケインズ・シュペンター・下村治―のどれが正しいのか>と経済対策の議論を重ねている。そのなかで慶応大学 小幡先生との議論を用いて次のように述べている。

『先生が理解しているケインズとは、即ち「ボールがゴロゴロ落ちてゆく時に、それを止めようとしても意味がない。落ちるところまでまずは落とせ。しかしそこからリバウンドしないときその呼び水して支出せよ」…まさにポーランド政府がしたことである』

理にかっっている議論である。グローバル化した社会では内需を増やそうにも輸入で補われることから価値は少ないのだ。需要が増えれば国外工場の生産増加が中心となる。為替やTPP、法人税、派遣法などの問題に絡み、経営者は“国内で生産したくとも政府は出て行けと言っているようなものだ”と言った発言が目立つ。またやボード人材も国内に拘っていない。まさにボーダレスになりつつある。
従来とは違った新たな視線で経済を見、自らを考える必要がある。

さまざまなことを教えてくれる一冊であった。

 

武士道・現代語訳

On 2010年11月11日, in 書評, by admin

現代語訳 武士道 (ちくま新書)

武士道・現代語訳 新渡戸稲造 山本博文訳・解説

本書は“日本人は宗教もないのにどのように道徳を学ぶのか”という対外からの疑問に応えたものであり、それを日本語訳にしたものが本書となる。

“【武士道】は新渡戸が夢見た【国民的性格】である”と帯には記されている。性格を広辞苑で紐解くと『各個人に特融に、ある程度持続的な、感情・意思の面での傾向や性質。ひとがら』とある。新渡戸は国民ひとり一人が本書で記された人物であると示したのだ。

感情や意志はなんらかの外的環境に対して起こるものである。内面から沸々とわき出るのも外部環境に適応するために発生すると言って良い。自らを振り返ると感情や意志を“こういう考え方をしてはいけない”とか“このケースではこう考える必要がある”など未だ思うのは未熟の表れである。一生追い求めるものだとは思うが、進化の軌跡がなく情けない思いをすることが多い。果たしてここで示す日本人の道徳観である【武士道】とは何なのかそのエッセンスが次の一文に表れている。

「武士道は、そのような知識を軽視した。知恵に至るために手段であるとした。そのため、その境地に達することのできない人は、たかが便利な機械とみなされ、もとめに応じて和歌を詠んだり、格言口にすることができるだけの者とされた。こうして知識は、人生において実際的に応用されるべきものだとされた。このソクラテス的な教えの擁護者は、中国の儒者王陽明で彼は『知行合一』(知ることと行動することは同じもの)を繰り返していた」

“西郷隆盛は古典に通じた学者を、本の匂いにする愚者”と呼んだらしい。“頭でっかち”を嫌味嫌った表れなのだろう。現代の文脈に落とすと“実践で有効な学びをしているか”というのがまず問題である。社会環境が激変し各個人の守備範囲が広がる以上、我々は広域の学びを心がけなければならないと思う。なぜなら“変化は何の前触れもなく表れる”からである。従来は企業が“学び”のBaであった。経済が拡張されていただのだから、学ばせるゆとりがあった。しかし国内に限ればマーケットが縮小され、そのパイを奪いある以上こうしたゆとりはあまりない。それは中小企業と社員教育の関係性に従来から表れている。
要するに我々が“知行合一”をするためには組織以外で“学ぶ”必要があるのである。実践知を高めるために多様な機会を創出しアシストすることが経営者の役目なのである。また学びが日常となるようなビジョンを描く必要があるのだろう。

本書は日本人の道徳観を示したものであり、日本人の心の“美徳”を表したものである。しかし自らを含めて、昨今の日本からこうした心を感じることはできない。経済における問題もこうした心の“表れ”ではないか。日々の報道を見ても、道徳観の欠如や甘えから発生している事件が多いように感じる。道徳観の積重ねなど終わることのない研鑽ではあるが高みを目指して失念することの内容にしたい。進化の軌跡を残したいと考える。

 

日中韓 歴史大論争

On 2010年11月10日, in 書評, 雑感, by admin

日中韓 歴史大論争

櫻井よしこ、田久保、古田と中国、韓国の論客との対談集である。対談とは言うものの会話は粗絡み合っていない。私は以前より、日清戦争や日韓併合を含めた隣国との問題はアカデミックに長期的に議論を重ね、政治へ進言するのはどうかと考えていた。その理由は、日本や韓国は選挙への配慮することから、政治が判断することは難しいのではないかとの思いからである。しかしジャーナリズムや学者の議論においてさえ、歴事事実の検証を積み上げることすら困難のようである。中国のような一党支配下の教育であれば当然のことかも知れない。浅学非才にてこうした問題の解決イメージさえ湧いてこない。

日中韓 歴史大論争 (文春新書)

尖閣の問題以降、国内は中国をより強く意識している。国を意識することは大切な好ましいことである。本書は尖閣問題以前の議論であるが、杏林大学名誉教授 田久保氏は日本の【右傾化】という質問に次のように答えている。

『そもそも戦後日本は国家として非常に不健全な状態からスタートしているんです。国防に関しても当初は自衛隊すらなく、その後も専守防衛が基本で、非核三原則持っている自主憲法も制定できなかった。その結果、戦後教育も決して満足な姿にはなりませんでした。いうなれば左傾化した状態だったんです。それを今、真ん中へ戻そうとしているだけであって、それは右傾化ではなく正常化なんです』

この議論は“戦後教育左傾化を真ん中へ戻す”ということが必要であると述べている。本論の議論はとはずれるが、こうしたどのようにも解釈可能な表現は何ら説得性がない。右傾や左傾は主観に過ぎない。今行うべきは、国家としてのビジョンを描き、憲法により表現され、国民が受け入れることが大切なのではないか。こうしたことは、ステークフォルダーである対外諸国から受入れられることが前提となる。田久保氏は政治家ではないのだから“真ん中へもどす”などと言わずに、日教組の….と表現すべきであろう。しかし過度な感情の高まりは危険であることを十分に理解したうえでの行動が必要である。

実際には教育以上に戦後の【あいまい処理】が中国や韓国との問題を表出しているのではないか。【あいまい処理】は長期的視座からビジョンを描けないことが最大の要因であろうと思う。この問題は選挙制度に帰結する。衆議院 参議院 統一地方選挙 党代表選挙 4年間に5回以上行われるのであるから、短期的に受け入れられる政策が中心になるのは当然ともいえる。選挙制度そのものを見直すことが持求められているのではないか。大きな改革をするには、政治家が国民に対して既然としなければならない。既然とはぶれないということである。

本書を端緒に“戦略との関係”の考察を試みた。概ねの政党の求めることに変わりは無い。マエニュフェストでの達成願望項目ではなく、戦略の具体性を評価すべき時期に置かれているのだ。尖閣を切っ掛けに将来ビジョンが描かれることを望んでやまない。

 

経営理念・ビジョンと戦略の関係

 経営者は企業の方向性を定め、目標を設定し組織を強力に牽引する必要がある。どのような経営姿勢を貫くかという基本的なスタンスを明確化するものが経営理念である。その姿勢のもとに自社の目指す将来の姿を、社員や顧客、そして社会に表したものがビジョンである。これらの概念が企業の基本的な価値観を示しているとすれば、戦略はそれを具現化するために、より具体的な方法論を語ったものといえる。

【マイクロビジネスの視点】

 経営者の肝はここにあると考える。どのような“企業を創りたいか”が定まっていなければ、そもそも目標設定などできるはずがない。企業存続の決定要因なのである。言葉を換えると価値観とも言える。
 マイクロビジネスの場合、理念を決定するのは創業経営者となる。しかし理念が無い企業が多いのが現実である。この要因は金銭的欲求や就業が困難なことが理由となって創業することが多いからではないかと推測される。こうした企業の意思決定は、売上や利益だけで決定されやすい。結果としてドメインがあやふやとなり、事業形態がドリフトするのである。いわゆる戦略が無い状態となる。

創業者における理念は『自己哲学』である。ビジョンは哲学を具体化したものである。起業要因は前記したように、ネガティブなケースも多々ある。しかしその立ち位置にて理念を創出しなければならないのである。理念は、生きる為の【利益】であってはならない。望ましいのは【倫理的】観点から思考を重ねることである。
次にどのような業種であれ【顧客に望まれる】ことが重要である。要するに商品価値をあげなければならない。この【こだわり】は理念と通じて始めて生み出されるのである。
こうした思考を重ね理念を構築する必要がある。このことが長期的な存続と発展を可能すると考える。

次回は戦略策定のプロセスを予定しております。

 

経営戦略 1 序章~

On 2010年11月8日, in 経営戦略, by admin

経営戦略論は、これまでにも多々読んでいるが基礎的なことを一度まとめたいと思う。当然のことながら極力小規模企業・マイクロビジネスの文脈に落としながら考察を重ねたいと考えている。過日書評でも述べた【MBA経営戦略・グロービス】をノートすることで順を追っていきたいと考えている。本書は、ボリュームは少ないが基礎は概ねカバーされていると思う。

序章 PP7~
戦略策定要件の理論

戦略の視点と本質
<戦略的意思決定の意義>

戦略的意思決定とは【企業が進むべき方向に関する意思決定】を指す。企業が成長するためには明確な方向性に基づき、どの分野へいかにして進むかを決めなればならない。また環境の変化や競合企業の動きに対して、自社が最も有利に成長できるような道筋を選ぶことが必要である。これは経営資源に限りがあるため【選択と集中】が肝となる。意思決定はマネジメントだけでなく、企業内部のすべてに徹底する必要がある。その徹底の度合が戦略の実現を左右し、競争に勝てるか否かに大きく影響する。経営戦略が競争戦略とも呼ばれるのは、競争を勝ち抜くための指針を与える『戦いの構想』という意味が含まれているからである。

<戦略の寿命と転換を迫る要因>

戦略の変化は環境に適応するための企業の変化ととらえることもできる。競争が複数企業の戦略のぶつかり合いである以上、与えられた環境に最も適応する解を求めることだけが戦略ではない。相手の取るポジションを予測して戦略を立てることも必要である。

<戦術との対比>

戦略と戦術の違いは相対的なものである。トップの立場からすれば戦術レベルであることでも、部門長の立場から見れば戦略にあたる、戦略レベルという言葉の意味は、置かれた立場によって決まるのである。

【マイクロビジネスの視点】

マイクロビジネスの場合【小回り】が利くことが大きな利点である。成長するには【蓄積】が必要となる。存続を左右する『資金・資本』の蓄積が重要であることは言うまでもない。これは金融機関からの評価が経営の実践に影響を及ぼすからである。こうしたことからも売上主義的な経営に走りやすい。こうした時に有効なのが【小回り】がきくことである。商材や事業形態の変更などである。

小回りであることから、利益を伴ったとしても短期な売上計上に過ぎない。ドメインとも言える【企業が進むべき方向に関する意思決定】とは程遠い。この現象は“負のスパイラルの入口”なのである。自社が得意なこと【コア・コンピタンス】の蓄積、経営資源の蓄積とはならないのである。

【処方箋】

<リソースの確認>
まず自社の現状を確認することが重要である

① 棚卸
 資産の棚卸も当然のことながら、“能力の棚卸”を行う必要がある。また会社全体、個別従業員の能力、経営者の能力それぞれの棚卸をしなければならない。

② 時間
 経営の実際ではここまで述べたことが感覚として掴んでいても“時間”の問題なしえないということがある。タイムマネジメントの観点からビジネスプロセスを分解することが必要である。さらに本来必要でない作業を捨てることも併せて行う必要がある。

③ エンパワーメント
 マイクロビジネスは全体に目が届きやすい。従業員の能力アップと時間の確保が可能になる。

①~③により会社の現状に【糊しろ】を持たせるのである。そのためには、まず能力と行動時間を把握し自社の方向性を明らかにするのである。期限は設けるが、十分な時間をかけて良い。空き時間に行うことから生産性には影響を及ぼさない。将来を決定する重要な時間である。但しリソースに限界があることからトレード・オフを十分に意識する必要がある。

 

多摩大学大学院【実践知識経営・紺野教授】 
『場』・『場所』・『共創』について   ゲスト 岩崎嘉夫氏

昨日11月4日 公開授業(OB対象)に参加をした。ゲストの岩崎氏は株式会社前川製作所の元専務で現在財団法人和敬塾の理事でもおられる。すこし和敬塾について紹介したい。
当塾は学生を対象にした寮であり、共同生活を通した人間形成を目的としている。歴史も古く多くの著名人をOBに抱えている。当塾は人材育成の場なのである。【人が絡み合いながら切磋琢磨し成長する場】を提供しているである。

 これまで色々な機会にBaについて述べてきた。岩崎氏のお話を経営的視点に置換えると内的観点と外的観点が融和を可能とするBaを形成することが経営者の役目の一つであるように考察される。個々人の境界が取り払われて全体となるBaの形成である。物理的にはオフィスとなるが、コンセプトとしては価値観共有を可能とする関係性となるのではないだろう。要するに共同体の形成なのである。
  和敬塾はこのような理念のもとで人間を磨くBaなのだ。相互依存のもと我々が形成されて行く。“利他”の心が養われることに間違いはないであろう。

経営の文脈で考察すれば、こうした環境を構築することができればイノベーション創出の可能性を高くする。“暗黙知を形式知化する場”形式知と形式知をから見合わせる場“絡み合った形式知から暗黙知を生ませる場”暗黙知と暗黙知の理解を可能とする場“SECIモデルの場を可能とする場を形成することが企業成長を可能とするのだろう。

【場と場所の関係性】【コト】など未だどこまで理解をしているのか不安である。生涯勉強しても端緒に過ぎないのだとあろうが、今後も継続的に研究を重ねたいと思う。

 

なぜ、脳は神を創ったのか? (フォレスト2545新書)

くだけた著書名が多い筆者であるが、世界的な脳研究者である。上智大学外国後学部英語学科卒(言語学)三菱地所入社後、イエール大学留学、カーネギーメロン大学大学院哲学科計算言語学研究科博士課程転入、カーネギーメロン大学大学院博士課程修了
要するにものすごい人物なのである。“頭の良い人は難しいことを簡単に説明する裏を返せば簡単なことを難儀に話す人は如何なものかということになる。本書は印象深いところが多いのだが「宗教と統治」に強く興味を引かれた。米国中間選挙を終えたところで時期的にも良いように思う。
中間選挙にて民主党は大敗したがオバマ政権誕生時の米国は、「我々の民主主義はここまで進化した」ともの凄い盛り上がりであったらしい。リーマンショック直後であり脆弱な経済があらわになったにも関わらずである。当時出張などで米国に行った友人が皆同様に語っていた。この現象を本書は次のように語っている。
「たとえば、前任の大統領、かのジョージ・ブッシュはイギリス王室の遠縁にあたる、それこそ正統派のWASPでした。彼は大多数のアメリカ人から見てもおかしな戦争に突き進み、失態をくり返し、結局は金融危機を招きました。にもかかわらず金融危機の克服しかり、アフガニスタン撤退問題しかり、史上最悪の後始末をオバマに託し、大統領経験者として悠々自適の人生のつづきを楽しんでいます」
著書はこれをプロテスタントとカトリックの関係から説明しているのである。文中のWASPとは【White Anglo-Saxons Protestant】の略である。これが支配層の条件ということである。ようするに金融危機克服失敗、アフガン撤退失敗などが起きたら「カトリックのせいにすればいい」と考えているというのが著者の考えなのである。政権押し付けとも言える。
これがあまり知的でない週刊誌や特別な情報がると言いたげな人が酒の席で語るのであれば聞き過ごせば良い。しかしアカデミックな人物が論証の元に語るとなると話は別である。一神教の怖さとでも言えば良いのだろうか。比較文化論を少し学ぶとこうしたことは、極めて納得がしやすい。多数の戦争は宗教家が関与しているであり、日本だけに原爆投下されたのは『キリスト教』でないことによると著者は述べている。日本人はわかりにくい理由であるが、信仰心が強い国家や人であれば温度差を埋められるのだろう。
こうしたことは知識としてこうしたことが理解できても肌感覚として理解は難しい。外務省はどうなのだろうか。前原外務大臣はメール問題でいとも簡単に代表の座を辞している。あの事件も危うさ感覚的に掴めなかったのかと思う。果たして対外インテリジェンスの戦いに勝てるのだろうか。

 

研究プラン

On 2010年11月1日, in 組織, by admin

組織論はライフワークとして研究したいと思っている。今行っている研究プランについて掲載して見た。

研究意義 問題意識

本研究は中小企業の存続について問題意識を持ったものである。中小企業庁平成21年度調査概況によると従事者は2.943万人に及び雇用に占める割合は高い。また中小企業白書(2008)では全企業数の99.7%であることが明らかとなっている。
経済、雇用に影響力が高い中小企業であるが、創業後約半数が3年以内に廃業に至る(工業統計など)。倒産は多数の研究がなされている(たとえば戸田1982)。当然のことながら倒産・廃業と資金は深い関係にある。創業3年以内は、信用保証協会、日本政策銀行において十分な支援がなされている。また実務者としての視点、起業コンサルタントの視点から見ると経営戦略やマーケティングに大差はないと思われる。
次にIPOを可能にした企業と成功企業と仮定して、系家者の著作物(20社)などから特徴の抽出化を試みた。その結果これらの企業には次の3点の共通要因が明らからとなった。一つ目に成長以前に右腕人材を要していることである。次に創業者は学生時代に部活動や生徒会のリーダーを行っていた。三つめに成長と組織能力に深く留意していたことが明らかとなった。このようなことから創業期の組織計画は重要であると考えられるが、このような研究はあまりなされていない。
このようなことから【創業期の組織形成】を照射し研究を試みたい。求めるのは、創業期組織形成のPDCAである。

研究テーマの背景

小規模企業にて組織構築が困難な一端には、採用、定着率、教育に難しさがあることは、経験や中小企業庁の調査から明らかとなっている。また経営者は営業や技術の要であり全体を統括する立場である。こうした組織ではIPO企業で見られた【右腕人材】が有効であることは明らかである(たとえば脇坂2003)。研究対象企業は不安定要素が多く、右腕人材また専門人材は縁故採用に頼らざるを得ない。また縁故採用であっても高い離職率を示している。またIPO企業で見られた右腕人材に求められる職務は経営者になりかわるサポートである。サポートにより職務を分担し組織構築がなされるのである。
組織成員は募集、選抜手順の手順を踏み採用される。中小企業勤務者に質的調査を行った結果次の特徴が抽出された。まず、安定性や所得より自己実現に意欲が見出すことができた。次に経営者との距離の難しさがあげられる。第三に離職に対して意識が低いことがあげられる。また自己実現の難しさや経営者との距離が転職に結びついている。以下は勤続期間について調査結果である。中小企業は中途採用にて、補充的に経験者を採用するケースが多い。グラフ(1)は横軸に勤務者数、縦軸に勤続年数を示したものである


ここで明らかなように3社を起点に勤続期間が短くなる。また転職回数が少ない段階は、大手企業と比較されることから実際の採用は困難である。グラフ(1)におけるサンプル数は少ないが、総合人材ニーズ調査 などにおいても同様の傾向を示している。
こうした低い社員定着率が組織知の蓄積を図れないことに結びついていると考察する。また低い組織知は環境適応を困難とし倒産、廃業を高めるとの考えに帰結する。

研究目的

社員定着率には価値観共有が重要であるとの考えから、組織文化についての研究を行ってきた。研究過程にて対象組織勤務者に、転職を繰り返す理由のインタビュー調査を行った。離職の共通原因に、旧職の価値観が棄却できず離職に至るケースが見受けられた。研究結果として、経営者と成員が求める「コト」に違いがあることが明らかとなった。そのうえで成員の価値観やビジョンを引出す表出場のプロトタイプを試みた。ここまでの過程において、創業時の組織構築も経営戦略と同様に起業時から形成することが望ましいと思われる。また“組織学習が価値観共有に影響力を有するのではないか”との着眼を得た。
以上のようなことから【組織学習により価値観の共有が成されるか】を本研究の主たる課題とした。仮に成されるとすれば、どのような組織学習プロセスによるのかを併せて明らかにしたい。これは言葉を換えると組織文化の形成過程である。組織学習論を援用した組織デザインを本研究のテーマと考えている。

研究方法

フェーズ1    文献研究
フェーズ2    デプスインタビュー プロトタイプ(仮説)の形成
フェーズ3   調査方法の検討・調査・プロトタイプの検証と考察
フェーズ4   論文執筆